「ハル」

この響きだけで、わたしたちはつい、ほほを緩めてしまう。
冬を耐え忍んだ、生きとし生けるものたちが
大きく伸びをし天に向かって、朗らかな笑顔をみせる。
目に映るものは、なぜか少し桜霞がかかったようで、
あぁ理由もなくこころは踊る。
庚虎も、はや2ヶ月。
トラもその黄金の毛皮を脱ごうかな、という陽気になる頃
「ハル」はここにもやってきて、
重く古くなってしまった殻を脱ぎなさいと囁く。
思えば幼い頃は、おばあちゃまたちと揃って、お雛様を飾った。
あの手つきで、これまでを丁寧に重ね、斟酌して
いのち華やかな場面を、幾つも幾つもつくってゆこう。
「春」華やぎの季節に寄せて。

